21世紀の漆を考える

21世紀の漆を考える

天然素材うるし

コンセプト
天然うるしとは?
・うるしの木について
・生うるしについて
・うるし液の種類
本物とにせもの
うるし製品の価格
・生産のコスト
・流通のコスト
・社会的コスト
漆器のつくりかた
・漆液の生産と精製
・素地のつくりかた
・うるしの塗装方法
・加飾のうるし技法
・塗装工程の実際
・塗りに失敗すると
うるしは4K ?
うるしの科学
・科学(入門篇)
・少々専門的
漆は英語でjapan
漆器の主要な産地
うるしの雑学
根来椀の復元
・根来塗りとは
・実際の制作過程
・その他の試作品
イージーオーダー
・オーダー対象一覧
・パッケージについて
・対象製品 一覧
宝尽くしの加飾
家紋の加飾
扱う色について
特定商取引法に基く表示
漆製品のお手入れ方法
牛乳パックでつくる器
新 着 情 報
うるしの文献
リ ン ク


最終的な仕上げでもある漆技法

漆器として直接、目にする最後の仕上げをするための技法です。
永い歴史の中で、産地固有の産地名がついた塗り方や、その時代を映す技法など数多くの技法があります
   

塗りたて


塗り立て、塗り放し(ぬりっぱなし)、花塗(はなぬり)とも言う

油を含んだ漆を使い刷毛塗した後、乾燥させるだけの塗り方です
油を入れた漆を使うのは、塗った後は何もしないため、表面はそのまま見せることになります。油が入ることで表面に艶(つや)が出て漆独特の光沢が生まれます

真塗(しんぬり)
本来は黒漆の塗り立てを指しました
現在では、油を含まない呂色(ろいろ)漆の塗り立てを言います。色は黒呂色、透呂色に顔料で彩色したものがあります。
呂色漆を使いますが、砥ぎ出しはしないため塗った人の技量がそのまま現れます。小さなゴミやホコリを嫌い、刷毛目が残ればそのままとなるため塗り手にとってはごまかしの効かない細心の注意が必要な塗り方でもあります

呂色(ろいろ)


呂色(ろいろ)蝋色とも書く
油を含まない黒又は彩漆を塗り立てし、表面を研いでから摺り漆を数回行い、磨き仕上げを行ったものです。
蝋のようなしっとりとしたツヤのある深みの有る仕上がりになります
研ぎ出しは通常木炭を使用しますが、摺り漆を重ねる毎に炭の質を変える場合もあります。木炭の材質(朴の木など)により炭の硬度が異なり、仕上げに近づくほど木目の細かさが必要になるからです

摺り漆(すりうるし)拭き漆(ふきうるし)とも言う
生漆を布や綿などで木地に摺りこみ、ムラになっている余分な漆を紙でふき取り乾燥させ、通常はこの作業を7〜8回繰り返します

呂色(ろいろ)仕上げに用いる場合と、木目を美しさをきれいに見せるために行われます
摺り漆の質は、使用する漆の質と摺りこむ回数、摺りこみ方で大きく変わります。丁寧な仕事ですと上質な国産漆を使い、たんぽ摺りを均等に何度も行い、この工程を十数回も繰り返すことがあります。銘木の杢(もくめ)を際立たせる技法です

変わり塗


変わり塗 鞘塗(さやぬり)とも言う
江戸時代に盛んになった名前の通りの変わった塗り方で、多くの種類があります
武士の命とも言える刀を収める鞘(さや)は、戦国の世の時代よりも実用品から装飾性の高いものになり、多くの変わり塗を生みました

素地は竹ではないのに竹に似せた竹塗や牡丹絞塗、七々子塗、磯草塗、黄立塗、松皮塗、布目白檀塗、卵殻塗等々があります。
変わり塗のページへ ⇒

加飾


うるしを塗った器物に文様など装飾することを加飾と言います
代表的な蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)をはじめ芸術性の高い多くの加飾法で飾られ、重要文化財(国宝)に指定された作品などは美しい絵柄が楽しめます

蒔絵 (まきえ)
漆で絵柄を描き、そこに金、銀、錫の金属粉や色粉を蒔き付け文様を作ります


平蒔絵(ひらまきえ)
平蒔絵の断面図

基本となる蒔絵です
絵漆を筆で絵柄を描き、金属粉や色粉を蒔き付け、余分な粉を取り除き乾燥させます。
乾燥後に摺り漆を行い蒔絵粉で磨き上げます

高蒔絵(たかまきえ)
高蒔絵の断面図

炭粉や錆漆を使い絵柄の部分を高く盛り上げていきます
その上に絵漆で絵柄を描き、金属粉や色粉を蒔き付け、余分な粉を取り除き乾燥させます。
乾燥後に摺り漆を行い蒔絵粉で磨き上げます


研出し蒔絵(とぎだしまきえ)
研出し蒔絵の断面図


中塗の上に漆で絵柄を描き、比較的粗めの蒔絵粉(金属粉や色粉)を蒔き付け、上塗を行います
乾燥後、炭で絵柄部分を研ぎ出し、磨き上げて仕上げます


肉合研出蒔絵(ししあいとぎだしまきえ)
肉合研出蒔絵の断面図

高蒔絵と研ぎ出し蒔絵を組み合わせた技法です
工程の手順は変わりませんが、炭で研ぎ出す際に平面部と高蒔絵の部分を同じ様に研いで行かなければなりません
蒔絵の中でも一番高度な技術が要求されます


 拡大画面を開きます
材料の厚貝

螺鈿(らでん)
貝を薄い板状にし、下絵を写し取り貝を切り抜きます。比較的大きな文様の場合は小さな部分を組み合わせて切抜いていきます
漆の表面を同一の下絵で彫を入れ厚貝(1〜2mmの厚味がある)をはめ込み、漆で接着します
又は、木地を彫らずに直接貼り付け上塗をして研ぎ出す方法が採られます
使用される貝は夜光貝,あわび貝,白蝶貝(南洋真珠貝),黒蝶貝,あこや貝(真珠貝)等が用いられます。これらの貝は貝殻の内側に真珠層(真珠と同じ成分)を持ち真珠同様の美しさを持っています
厚貝は百枚重ねて四寸(132mm)位の厚味を使用します


 拡大画面を開きます
材料の薄貝

青貝(あおがい)
貝を薄い板状にしますが、その厚さは(0.08mm)程度で百枚重ねた厚さが二分五厘(8.25mm)の厚味になります
文様を切抜く方法は、小刀で切抜いたり、下絵から形を整えた鏨(たがね)で打ち抜いたり、絵柄以外の部分を希塩酸で腐食する方法で行われます
切抜いた貝を漆で貼り付け上塗を行った後、研ぎ出して仕上げます


平文(ひょうもん)
螺鈿や青貝の貝に相当する部分を金属の薄い板で行うものです
使用する金属は金,銀,錫(すず)の薄板が用いられます
研ぎ出しなどの工程は同様です


沈金(ちんきん)
塗り立て(花塗り)の表面を線彫りし文様を描き、そこに金箔を貼り付け金色の文様としたものです
中国で始まった技法と考えられていますが、輪島塗の沈金は良く知られ、国内各地へも伝承されています


蒟醤(きんま)
タイやビルマの漆器に多く見られる技法です
漆面に線彫りし、その窪みに彩漆を埋めて研ぎ出したものを指します
使われる木地は籃胎(らんたい)であり、材料である竹が産出することや漆の成分が中国産や国内産とは異なるため発達した技法と思われます


石目(いしめ)

炭の粉や乾漆(かんしつ)の粉を使用し、この粉を漆の上に蒔き縮緬(ちりめん)皺が出来た状態を石目と呼びます
表面に小さな凹凸ができるため、身近なところでは滑りにくい箸(はし)の仕上げに用いられます


堆朱(ついしゅ)

朱漆を何度も何度(数十回)も塗り重ね厚い層を形成します。この面を浮彫し文様としたものです
黒漆を使用したものは堆黒(ついこく)と呼びます


箔絵(はくえ)

膠液(にかわ)や漆で絵柄を描き、その上に金銀箔を貼り付けます。乾燥後余分な箔を拭いとります
残った金銀箔が文様となります


存清(ぞんせい)

中国で発達した技法で中国漆器には良く見かけます。中国では彫填(ちょうてん)や填漆(てんしつ)と呼ぶようです
呂色漆の上に彩漆で文様を描いて、乾燥後その輪郭を線彫りしたものです


堆錦(ついきん)

沖縄の琉球漆器に見られる技法です
漆に顔料を混ぜたものを餅つきのようにつき、平らに伸ばして板状になったものを切抜いて絵柄とするものです
切抜いたものを漆で貼り付け文様とします。花の絵柄などでは葉は緑、花は赤や黄色などが用いられます
鮮やかな朱があるのは本土よりも紫外線が強いためと言われています


卵殻(らんかく)

漆では純白の彩漆(いろうるし)を作ることが出来ません
卵の殻を細かく砕き、漆で貼り付け文様とする技法です。現在ベトナムでもこの卵殻による漆絵が作られています

産地名のついた塗



産地の名前が、そのまま仕上げ方法に使われています
もしくは、その逆であるかもしれません
地名は現在でも使われているところと、旧地名が混在しています

津軽塗、浄法寺塗、能代春慶、川連漆器、鳴子漆器、会津塗、日光漆器、鎌倉彫、高岡漆器、輪島塗、山中塗、飛騨春慶、越前漆器、 京漆器、紀州漆器、香川漆器、八雲塗、琉球漆器などがあります

産地の地図 ページへ
産地について更に詳しくご覧になれます


(C) Copyright 2002 urushi Takahashi INC,. All rights reserved